当院の医療情報のIT化
当院の医療情報のIT化
非電子化
医療情報システムは、医療機関を構成する部門間の業務を効率的に処理するために医事会計システムや検査や処方等オーダー・エントリー・システムといった段階を経て発展してきました。私自身、今まで勤務させていただいた病院の研究会などで医療情報システム、支援システムの共有化について謳ってきた割には、当院では、まだ電子カルテを導入していません。紙カルテの運用を継続中です。とりあえず、引き続き使用させていただいていたレセコンのハードの保守期間が終了したため、平成23年末にレセコンだけ入れ替えました。レセプト提出データを加工して、診療支援システムに組み込んでおり稼働中です。iPadを利用した診療支援システムも構築中です。
2003年8月には厚生労働省(医政局長)の私的検討会として「標準的電子カルテ推進委員会」が設置され、2005年5月には委員会の最終報告書がとりまとめられました。その内容について興味があられる方は是非検索され読んでみてください。また、2006年11月には札幌で第26回医療情報学連合大会が開催され、その中で電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX;Standardized Structured Medical Information Exchange)のデモンストレーションが行われました。厚生労働省の公の場での医療情報共有化の最初の発信と私は理解しています(間違っていたらゴメンナサイ!)。複数の医療機関で患者さんの採血検査、画像検査などデータの連携や情報共有化については、国も推進されるのでしょう。一部の地域では医療ネットワークも患者情報共有の観点より構築されつつあります。患者情報共有の先には何があるのでしょうか。私が初期研修をさせていただいた長崎医療センターのある大村市では医療情報の共有化の草の根運動が現在では、長崎県全県に広がりを見せており興味深いところではあります。
オンラインで診療録、検査結果、画像情報など共有することは物理的に可能であっても、患者情報のセキュリティーを確実に担保し得るシステムなど存在するのでしょうか。それよりも結果的に(時間的には数十年後)この先も医療をうけられる患者さんにとって、医療情報の共有化のメリットが本当にあるのかどうか私はわかりません。その成功はどのように検証されるのでしょう。医療費削減のため?。受診抑制?。OTC推奨。医療情報の共有化、患者情報の共通タグ、リアルタイムのオンラインネットワーク環境など言葉はかっこよく私もすぐ飛びつきたいところではありますが、落ち着いて勉強する必要はあるかと思っています。
自院内でも情報の共有化はし得ていません。情報の共有は私一人でするものではありませんので。。。ただ今まで作成してきたファイルは自院内での医療情報の共有化に寄与するものではないかと思い、開院してから使用しています。
データベース管理
医療関連のシステムといえば、先に述べたような医事システムやオーダリングシステム、検査システムそして電子カルテやなどが一般的なのでしょう。紹介状、胃内視鏡所見などの検査所見、予防接種の履歴や日計表など業務に関連する医療情報は「ファイルメーカープロ」で作成したファイルを使用してデータベース管理をしています。現在使用しているレセプトコンピュータが明日からでも電子カルテにバージョンアップできるらしいのですが、診療支援情報なるものが組み込んでいただければとても有用なのですが。
とある未熟児センターでは1991年に既にデータベース化
1992年に医師として最初に勤務した国立長崎中央病院(現長崎医療センター)で初期研修をさせていただきました。そこで「ファイルメーカー」で運用されている診療支援システムをみました。当時はクラリス社製の「ファイルメーカーII」でバージョンは「1」だっかたと記憶しています。スーパーローテート医の最初の研修先は未熟児室(現長崎医療センター成育医療センター未熟児・新生児室) でした。
指導医の先生方には日々の診療の中で、患者さんそして御家族に対する応対の方法から診察の手順、治療計画の立て方など指導していただきました。未熟児室の医師室のパソコンで「ファイルメーカー」で作成された「出生予定ファイル」をみたのが、「ファイルメーカー」にとりつくきっかけでした。同院の3階には産科病棟があり入院されている妊婦さんの情報と、出産予定日や児の情報ファイルでした。入院前の妊婦さんの一覧もありました。当時は医師室と病棟はLAN接続はされていなく(というかLANボードは外付け)スタンドアローンにてデータベース管理をされていました。プロレスが大好きなT先生と最初の学会発表の指導をいただいたきァイルメーカーと出会うきっかけをつくっていただいたT島先生には、医師としての姿勢など濃厚な手ほどきをうけました。未熟児室での研修をはじめに、2年間の楽しく充実した初期研修はあっという間に過ぎました。いまから20年(+α)ほど前のことです。
当時、研修した病院には初期研修医が合わせて30名ほど在籍していました。研修医室は救命センターの近くにあり、同じカマの飯を食う仲間たちと一緒に研修期間をすごしました。病院の出入りの業者さんの中に同僚医師の高校時代の同級生(○○販売のSさん)がいて、早速彼より Macintosh IIsiを購入しました。多くの研修医が彼から購入したくらい医局にはMacがあふれました.私のマシンはMPUは68030の20MHz,HDDは105MB,メモリーはオンボード1MBに1MB SIMMを4枚を加え5MBというスペックでした。今では考えられないロースペックでもプリンター込みで80数万円。研修医の薄給を貯め購入資金としました。ちなみに、先の未熟児室で使用されていたものはIIciでしたが残念ながらこれはもっと高価で手が届きませんでした。
離島の医療機関では
2年間の初期研修の後は離島の病院に赴任しました。
赴任した先の病院では、「ファイルメーカー」で作成された数多くのファイルが既に医療情報のデータベースとして使用されていました。レセコンとは別に運用されていましたが、患者さんのデータ(頭書きデータ)を書き出し、様々なファイルの基礎データとして使用されていました。診療放射線技師さんや臨床検査技師さんが作成し構築された診療支援システムでした。これらのファイルを院内の職員さんや、医師をはじめ、町の検診担当の職員さん方が業務に必要なものとして利用されていました。採血結果は検査技師さんによりcsvファイルを書き出していただき、これを手動で取り込み、健診結果報告書を作成していました。
後期研修時代
後期研修は大宮市(現さいたま市)の自治医大附属大宮医療センターの総合診療科でお世話になりました。外科病棟ではファイルメーカーではない別のデータベースソフト(3 Dimension)を使用されネットワークで使用されていました。ここでも入退院台帳、手術台帳など多くの台帳(ファイル)が存在しており、手術記録、入退院サマリーもデータベース化されていました。その後システムはファイルメーカープロで構築されたシステムに移行されたと聞いています。このころは自分でデータファイルを作成するようなことはしてなかったと思いますが。
研修後、離島へ
後期研修の後に離島の病院に赴任することになりますが、大宮からの引越しの前日に駅前の○○電気さんでApple最後のベージュMacシリーズの PowerMacintosh G3/266MTを購入しました。今でも使用に耐えますが、3年前にWindows機に乗り換えたため,このMacには時々電源をいれている程度です。ファイルはほとんど拡張子を付けて保存していますが整理には手つかずの状態です。
ファイメーカーによるデータベース作成の手始めは長男のための「ウルトラマン怪獣ファイル」でした。ウルトラマンにでてくる怪獣の写真をデジカメでとってこれを作成したファイルの画像フィールドに貼りつけます。怪獣をクリックすると拡大したり次の怪獣の写真に展開する仕組みです。フィールドは「作成日」「怪獣の名前」「怪獣の写真」の3つだけ。スクリプトを成したのはこのファイルが初めてでした。それを長男坊が使ってくれてしばらくの間はあそんでくれました。残念ながら、他の子ども達は全くウルトラマンファイルには関心がなく、彼らの目的にかなってないのか、ファイルのできが悪かったからかもしれません。
平成12年に介護保険が導入
平成12年に介護保険が導入されました。当時病院隣の特別養護老人ホームに週に1回の回診を担当させていただいていましたが、介護施設の職員さんよりデーサービスやショートステイなど施設の利用者情報の一元化につき御相談があったことをきっかけに、利用者さんのデータベースを作成しました。このファイルを作成するためだけにウインドウズ機を購入しました。当時介護関連のソフトは見かけませんでしたが、施設長さんにお願いしファイルメーカーのソフトを6個ほど購入してもらい、施設内にLANを組んでいただきました。ファイル共有をしてケアマネさんや介護士さんがどの端末から入力できるシステムです。データベース作成料とそのサポート料は施設に入所されている方,施設を利用されている方々の笑顔と、時々のケアマネさんからの宴のお誘いでした。情報共有のシステム作成をしましたが、さすがに介護請求に係るファイル作成までは時間がなく手がでませんでした。ショートステイ、デイサービス利用者さんのシステムが仕上がりまして、ケアプラン会議などでは、これらを印刷して使っていただきました。
ファイルメーカーで介護保険関連のデータベースを作成するにあたり、入力項目を作成(フィールドの定義)する際にも、用語がわからないものも沢山あり介護保険のシステムや介護保険法を勉強するいいきっかけになりました。施設の職員さんにケアマネ合格講座など勝手に開催し、受験していただきました。介護士さんからケアマネさんの資格を得て現在も地域でケアマネ業に奔走されている方々もおられます。今や介護区分は7つに増えていますが、「要支援1.要支援2」の介護区分がない時代です。
ちょっと前
医療機関は患者情報の共有化・電子化は避けては通れないものなのですが、私が赴任先で作成し、また使用していただいていた患者情報データベースが多くありますので、これを利用する手はないと考え、開院初日から使用しています。診療報酬を請求する端末としてレセコンは有用なのですがそれ以外の使い道は現在のところ見出すことができません。実際は使いこなせていないのが現状です。
レセコンのデータの利用方法ですが、まずはレセコンから患者さん情報の書き出し,これをファイルメーカで作成したファイルに取り込みました。診療の合間に、データの入力が追い付かないため、すべてではありませんが、当日受診した患者さんの記録を1日1回で紙に出力することで診療録として使用することもあります。一昨年の新型インフルエンザが流行した際には作成書類も多く、予約や接種管理が大変でした。そのためワクチン接種管理ファイル(予約から、予防接種履歴、接種証明書印刷)を作成し、多いに役立ちました。ほか以前作成した介護保険関係のファイル(主治医意見書、請求書)に手直しをして使用しています。小さなクリニックのため以前勤務していた病院でしていたように、ファイルを共有しては使用していません。今後は受付・看護職員との患者情報の一元化・連携を図り、診療支援のツールとしてファイルメーカーを使用しようかと考えています。データ書き出し方法を教えてくださったレセコンのインストラクターさん(Sさん)には感謝しております。
日常の業務ににおいて、「ファイルメーカープロ」は自らが使用しながら、使いやすいように作りこみができるのも大きなメリットであり、コストをかけず日々の診療に迅速に役立てるものが作成できる点において、ファイルメーカプロはなくてはならないものとなっています。
これから。
そろそろ電子カルテ?。健診もあり、これは紙媒体で提出。業務のながれと診療情報の電子化についてはよく検討する必要あるかと思います。今からです。
Special Thanks
T島先生,T柳先生(NICUの指導医の先生方)
F田先生(Mac購入の際に相談にのっていただきました、脳外科医)
K賀先生
診療放射線技師のK谷先生
臨床検査技師のK村先生
N沢さん(健診の問診内容を入力していただきました)
K崎先生(後期研修の時に、患者情報システムを構築されました)
M崎さん(スパーケアマネさん,社会福祉士,介護保険の様々を教えていただきました.「ケアプラン」などのファイルは現在も使われているとのこと)
Y島さん(とある病院の手術室勤務の看護師さん)
A山さん(とある病院の秘書さん)
【参考にしたwebサイト】
FileMakerメーリングリスト 略称:FMJML
Database Pros
Scriptology
診療情報提供サービス
りんごの里
作成したファイル
現在使っている診療支援のファイルです。基礎データはレセコンから書き出した頭書きデータとレセプト提出ファイルです。
● 検査台帳
検査委託機関で検査をしていただいています。検査データはサーバーより指定したフォルダにダウンロードし、これを検査台帳ファイルに取り込み。検査結果は印刷。
● 主治医意見書
要支援の区分ができてから、ファイルを変更していませんのでそのうち全面改訂。主治医意見書を提出する市に確認するとこれで提出可能。
● 超音波 検査台帳
検査結果記録用紙、患者さん説明用紙。腹部エコー,頚部エコー,乳腺エコーに対応。
● 胃内視鏡 検査台帳
● 検査結果記録用紙、患者さん説明用紙
● FAX台帳
送信文の作成、FAX受診は電話機のSDへ。SD内の送信データをこのファイルに取り込んでFAX送受診のデータは一元管理。
● 仕入れ台帳
医薬品、医療資材、事務消耗品の仕入れ台帳,
● 年末の在庫一覧の印刷
● 証明書診断書台帳/各種診断書、治癒証明書など
● 医療用医薬品の添付文書情報/薬剤のデータベースファイル
薬剤名をひらがな入力するとその一覧が表示され、クリックすると、添付文書(pdf)ファイルが開く。
● 仕分け台帳
● 紹介状御返事発行履歴台帳
このファイルは元々、勤務医時代に作成したものです。ある医療機関から患者さんの御紹介をいただいた時に、病診連携室あるいはカルテ室で患者情報を入力(要は、紹介受診された日に入力)、「受診のご返事」、入院された場合は「入院の御返事」、手術を受けられた場合は「手術の御返事」、退院された場合は「退院の御返事」、入院期間が長くなり経過報告を紹介元にするときに作成する「経過報告書」が一つのファイルになっています。「入退院ファイル」とカルテ番号でリレーションしており、入院して(あるいは退院して)数日(日付設定は何日でも可能で、上記御返事の種別で設定可能)たっていれば担当科の長へ,御返事催促依頼文が出力できるファイル。このファイルが起動したときに、未返事一覧がトップ画面に表示されます。残念ながら、病院全体の受診、入退院データの書き出しが困難、医事コンとの接続も困難とのことでお流れになりました。
● レセプトデータ取り込みファイル(RECIEPT_fmp)
当院はレセプト提出は現在は紙レセプトでなく、請求データをCDにやいて提出しています。現在のところオンライン請求でもありません。 提出するレセプトデータ(RECEIPTIC.UKE)を取り込み、患者氏名、生年月日、診療行為、医薬品名、コメントデータ、保険者データなどを表示します。医科電子点数表、レセプト請求データやファイルの仕様書とにらめっこしながら作成しました。
端末でレセコンのデータを閲覧することができますので、紙カルテで運用しているところではレセプトデータを参照し、カルテ表紙を印刷することができます。ほかコード入力していない傷病名の一覧を表示することができます。既に処方した薬剤もIDで検索することが可能なので使用中のパソコンに不具合が生じても、処方せんの出力は可能です。このファイルを作成することにより提出データの構造を解析することができました。請求データの列あるいは行がかわるとまたこのファイルは作り変える必要がありますが。。
● 予防接種管理台帳
各種予防接種の予約管理、予防接種台帳、予防接種済証印刷、請求書など。初回の予防接種の時に、同時接種、単独接種、自費接種のご要望に応じた接種計画表を作成、印刷してお母さんにお渡ししてます。
電子カルテへは
カルテはカルテ。いまのところ紙カルテの運用で困ってはいませんが、電子診療情報サポートシステムの構築を願っています。。。IDなどを引用して、診療支援情報がどこまで組み込むことが可能であるのでしょうか。頭書きデータ以外の入力データの書き出し、取り込みが可能となることを期待しています(既に可能?)。
遠隔診療
診て聴いて感じての診療しかしていません。遠隔診療のイメージがわきません。今後必要になる場合には導入を考えますが、都内まででかけて数社のデモを聴きに行く予定です。離島にいるころは在宅マルチメディア事業(補助金)で在宅患者さんのバイタルなどが医局のモニターで見ることができました。サテライトの診療所では親元病院のデータを閲覧するもでき診療の支えになっていました。自分でサーバーを構築するパワーはありませんね(泣)。かかりつけの患者さんについては、通常の診療からお電話でもイメージできそうですが、急な時なんかはやはり受診ですね。
(平成23年1月31日記載)